詩の中庭

日々の読書、詩集や詩書の書評、覚書など。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『十二歳の少年は十七歳になった』秋亜綺羅詩集(思潮社、2021.9.30)感想

透き通るように白い表紙に、曇りガラスのような温かみのある白でシンプルなかたちが刷り出されている。シルエットは大きなメロンと小さなスケートボードに乗った小さな犬だが、地球から宇宙へと飛び出していくようにも見える。そこに、黒字で一行、タイトル…

『しろい風の中で』田中眞由美詩集(土曜美術社出版販売2021.5.16)感想

濃紺の中に鮮血のように散る鮮やかな赤。エメラルドグリーンをしのばせたマラカイトグリーンの対比と、力強いペインティングナイフの筆致が印象深い装画は、著者の手になるものだという。題はthe earth 。そこに白抜きで「白い風の中で」とタイトルが入る。…

『野の戦い、海の思い』水島英己詩集(思潮社2019.10.31 )感想

水島英己の第六詩集、『野の戦い、海の思い』。力強い表紙装画。ざらついた紙質が、質感を添える。(装画 高専寺赫) 読了してまず感じたのは、ぎっしり詰まっている詩集だということだった。風の通る詩集、であるにも関わらず。それから、適切な表現ではな…

『月の声』ヤリタミサコ詩集(らんか社2021.10.29)栞

「月の声 を読む」~橋を渡って、さあ、月の声を なにしろ“ポスト・トゥルース”の時代である。詩集案を受け取った時は、ひとつの物語を多視点から描き出すことによって固定化した一方的な視点に鉄槌を下す、そんな痛快な詩集なのでは、と予期したのだが。予…

『ふづくら幻影』長田典子詩集(思潮社2021.9.1)感想

やわらかな銅版の装画に見入る。秋、実りと共に立ち枯れたつる草とその実をついばむメジロの繊細な像が、仄暗い草葉の重なりへ、その向こうへと誘いこんでいく。その上に平仮名で記された、ふづくら、の文字。帯文に失われた土地の名、とある。(装画 武田史…

『よろこびの日』和田まさ子詩集(思潮社2021.6.30)感想

藍色から浅葱のグラデーションを経て白地に青の幾何学模様と山吹色の光。朝の訪れを連想する装画が美しい(装幀・装画 井上陽子)。 帯に〈生きて帰ってきて さて、どうする〉とある。大病から生還したのだろうか?目次を見ると四章立て。一章の章題「苦い蜜…