詩の中庭

日々の読書、詩集や詩書の書評、覚書など。

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

なんどう照子詩集『白と黒』(土曜美術社出版販売2022.6.5)感想

かけがえのない人を失ったとき、理不尽な死や突然の悲劇に見舞われたとき、その後の“生”を人はどうすれば生きていけるのだろうか。自らの心の動きを見つめ、心身の感受する自然や人との関わりの中にその照応を求め、生きる答えを――答えというよりも、支え、…

北原千代詩集『よしろう、かつき、なみ、うらら』(2022.6.20思潮社)感想

静かだけれど物凄い詩集である。すべての作品に驚きと不思議な世界への誘引力があり、しかも言葉の展開に無理がない。“現世”に居て、現世の言葉で歌われているのは確かなのに、光り輝く場所や闇に触れる場所のことが記されている。魂の居場所というものがあ…

山本博道詩集『夜のバザール』(思潮社、2022.5.31)感想

アジア各地を経めぐる旅から編まれた羇旅詩集……ということになるのだろう。しかし、猥雑で活気に溢れる“豊穣”な現在と、様々な痕跡や記念館、戦跡などから浮上してくる近現代の歴史の層が重なり、さらに“豊穣”に見える市井の人々が垣間見せる経済的な不均衡…

粟裕美子詩集『記憶の痕跡』(紫陽社2022.8.1)感想

のびやかさと時の深みを湛えた詩集。丁寧で無駄のない情景描写に導かれて、いま、目の前にある景色と語り手の心の中に浮かぶ景色、そして土地や歴史が「ことば」に託して語り伝えてきたイメージや物語が鮮やかに立ち上がり自然に接続していく。 言葉は人の一…

峯澤典子詩集『微熱期 BLUE PERIOD』(思潮社2020.6.20)感想

静かで涼やかで遠くにゆらめき立つものに迎え入れられるような、“美しい時間”が広がる詩集だ。抑制された、しかし芯の立った文字を辿りながら、言葉の示す「意味」を、つい求めてしまう自身の性向を振り返る。意味を一対一に限定しない、しかしはぐらかした…