2022-01-01から1年間の記事一覧
詩集題名に〈ハハ〉が入っているが、いわゆる母もの、あるいは母と子の葛藤を主題にした私小説風詩集・・・ではない。象徴化されたハハ・・・母から(乳房の象形とも言われる)〈ヽヽ〉を抜き去られた〈ハハ〉は、そもそも語り手の内にあった母、記憶の中の…
獄門歌、Song of Prison Gate、と日本語と英語の題名が並んでいる。うっすらと何者かが現れ出ようとしているようなモヤモヤとした白地の上に、インパクトのある文字が詩集の“顔”一面に配置されている。目の錯覚のように中央に長方形が浮かび上がる表紙は、半…
みわかれ、みがくれ、と読ませる。見別れ、身別れ……山の下を流れ地上に沁み出し、別れてゆく水。水に流れゆく先の選択肢はあるのだろうか。みずは「見ず」という言葉にもつながる。山道や野辺の田舎道を連想させる表紙写真は、著者の撮影。砂利や土、野草が…
かけがえのない人を失ったとき、理不尽な死や突然の悲劇に見舞われたとき、その後の“生”を人はどうすれば生きていけるのだろうか。自らの心の動きを見つめ、心身の感受する自然や人との関わりの中にその照応を求め、生きる答えを――答えというよりも、支え、…
静かだけれど物凄い詩集である。すべての作品に驚きと不思議な世界への誘引力があり、しかも言葉の展開に無理がない。“現世”に居て、現世の言葉で歌われているのは確かなのに、光り輝く場所や闇に触れる場所のことが記されている。魂の居場所というものがあ…
アジア各地を経めぐる旅から編まれた羇旅詩集……ということになるのだろう。しかし、猥雑で活気に溢れる“豊穣”な現在と、様々な痕跡や記念館、戦跡などから浮上してくる近現代の歴史の層が重なり、さらに“豊穣”に見える市井の人々が垣間見せる経済的な不均衡…
のびやかさと時の深みを湛えた詩集。丁寧で無駄のない情景描写に導かれて、いま、目の前にある景色と語り手の心の中に浮かぶ景色、そして土地や歴史が「ことば」に託して語り伝えてきたイメージや物語が鮮やかに立ち上がり自然に接続していく。 言葉は人の一…
静かで涼やかで遠くにゆらめき立つものに迎え入れられるような、“美しい時間”が広がる詩集だ。抑制された、しかし芯の立った文字を辿りながら、言葉の示す「意味」を、つい求めてしまう自身の性向を振り返る。意味を一対一に限定しない、しかしはぐらかした…